最終更新日 2025年6月24日
医師に限らず、概ねすべての医療職は国家試験によって規定される国家資格を取得しなければ認められません。
しかし、誰でも国家試験を受けられる、というわけでは決してなく、医学部医学科の卒業資格をもって初めて受験が可能になるのです。
毎年倍率10倍と言われ、怠けると即留年とさえ言われる難関学部を通り抜けなければ、受験資格さえ与えられないのです。
現在の日本で取得された医師免許を使用し、例えばアメリカで医療行為を行うことは出来ません。
国際認証というスタンダードの部分で海外と日本の学習環境にはまだまだ隔たりがあります。
ですので、試験で問われる内容は同じでも、なぜそれが重要であるか、という観点の違いから海外と日本の国家試験を比較しても出題傾向よりもっと原始的な部分で違いがあるのです。
そのため、逆に海外で医師免許を取得した人がどうしても日本で医療を行いたい場合、日本の医学部をもう一度卒業し、日本の国家資格取得を目指す必要があります。
現在、この国際認証を達成しようとする大学は増加の動きを見せており、医療のグローバル化は今後ますます推進していくことでしょう。
医師国家試験では一体どのようなことが訊かれるか、というと最も基礎的な必修問題、つまり医学生にとって常識的な内容のものと医療についても知識を求められる問題に分けられます。
医療知識を求められる問題をさらに大別するに2つがあります。
これらの出題問題は4年に一度、対象となる疾患や最低限求められる公衆衛生の知識などが改定されています。
時代とともに移り変わる常識に取り残されないための配慮です。
近年はアルツハイマー病などの高齢者に頻発する疾患などが取り扱われることも多く、時代の中で重要な疾患を重点的に出題する、というスタンスは変わりないようです。
医療問題のジャンルの一つは病変組織や細胞の様子、薬剤作用のメカニズムなど基礎的な内容について尋ねられる問題です。
これは医学部低学年で学習する範囲が主になっており、単純な知識や努力がものをいう領域です。
授業で扱う病気のバリエーションは並ではない上、それぞれに固有の特徴、原因、治療法、禁忌などがある場合がほとんどです。
頻出問題があるにせよ、出題される範囲については膨大なものがありますのでなかなか一筋縄ではいきません。
その知識を総合させたうえで、医師として実際に治療にあたっていくため使用するのが医療知識に関する問題に分類されるもう一つのもの、症例問題です。
模擬的な患者さんのデータを与えられ、その検査所見や主張などから病気を推定し治療法まで答えていく、という外来診療さながらの問題となっています。
知識問題以上の見識が必要になる場合も少なくは無く、細胞診に関する問題のように一目でわかる特徴があるわけでもない、という場合も多々あります。
文字情報だけで与えられる患者さんの像をどうにか想像し、病気に関する手がかりをつかんでいくことが求められます。
問題の中にはドボン問題、とでも言うべき禁忌問題という区分のものがあります。
患者さんにこうしてしまうと死んでしまう、という選択肢を選んでしまう問題が頻発してしまうと得点率に関わらず不合格となってしまいます。
確かに、患者さんをうっかり死なせてしまいかねないお医者さんを世に送り出してしまうわけにはいかないでしょう。
こうした取り組みも手伝って、自分の得意なところだけ点を伸ばして受かろう、ということが出来ないようになっています。
合格への近道は決してないことが思い知らされます。
また、試験の日程は3日がかりで行われる500問の長丁場であり、付け焼き刃の知識では太刀打ちできません。
また、会場はライバルばかりでプレッシャーに負けてしまう方も少なくは無く、過酷なスケジュールの前に参ってしまい体調を崩すこともままあるようです。
また、試験会場は全国の主要都市のみにあり、地方の出身であったり地方の大学に通っている場合は試験会場のあるエリアまで移動を要します。
医師国家試験の合格率は平年9割前後と言われています。
近年は医学部の受け入れ人数が増加したり、医学部を持つ大学そのものが増加することで合格者数は毎年増加の傾向にあり、9000人前後が受かっています。
その一方で1000人の学生は毎年落ちていますが、一度不合格になるとなかなか合格することが出来ないと言われています。
実習などの医療に携わる環境から離れることが最大の原因で、富士学院など国家試験対策の予備校も存在していますが診療問題などに対する勘の鈍りや合格することに対する自信の喪失から来るモチベーションの低下が原因で合格率に新卒と既卒の間で差が生まれてしまう、と言われています。
医療の現場に出ていくため、患者さんを助けるために医学生は果てしなく長い道のりを歩んできます。
命を任せるに足る知識の持ち主だけが合格証を手にしてドクターとして医療の最前線で戦うことを許されるのです。